116-2.    舞い蛍   片山瞠山 作曲

数年前、とある小高い山で偶然に蛍の群れに遭遇したことがある。蛍は水辺にいるのもとばかり
思っていたが、そこには川や池などはなく、しかも余りの数の多さに驚き、また圧倒された。
目くるめく光の乱舞の中にいると、まるで異次元の世界に迷い込んだようで、心が震えるような
感動を覚えた。

川辺などの開けた場所でなく、森の中など人目につきにくい場所に棲息するので、あまりしられ
ていない「姫蛍(ひめぼたる)」という種が存在することを知ったのは最近のことである。

そのときの光景は数年を経ても、色褪せることなく瞼の裡に明確に残っており、この箏と尺八の
二重奏の小品を書く動機となった。
曲は三つの部分で構成し、それぞれT「蛍狩り」、U「はぐれ蛍」、V「舞い蛍」という副題を
つけた。

〔編成〕:箏・尺八
〔演奏者の感想〕:





 117. 町へ    ジョン・海山・ネプチューン 作曲

 この曲は、初めて田舎から町へ出てきた人についてのミュージカル・ストーリです。
 曲は、旅の無事を祈り、田舎風の陽旋法を用いた自由なリズムの尺八の独奏で始まります。
 軽やかな足取りで旅が続き、曲は陽旋法で続いていきます。町に着いたとたん、
 旅人は町の賑やかさに大きな衝撃を 受けます。
 このあと、都会風の陰旋法によるゆっくりとした、少し憂いを帯びたメロディが続きます。
 その後、さまざまな出来事を経験した旅人は、今や都会の早いペースや国際的な
 色彩・より早いテンポや日本的音階以外のトーンを楽しむことが出来る様になりました。





117-1.   松の楽   石垣征山 作曲

松楽会の委嘱により1993年12月に作曲。
松は竹・梅と共に我が国では慶事に用いられることが多い木です。
中でも松は長寿・節操を象徴するものとして古来、尊ばれています
この曲はそういった意味を曲名に含めつつ、何か節目になる演奏会の
一曲になればとの願いを込めて、筝・17絃・三絃・尺八それぞれABの
2パートを持つ合奏曲として構成した曲です。

[編成] 筝・17絃・三絃・尺八
[演奏者の感想] 雰囲気のある楽しい曲です。 





 118. 松 虫      唯是震一 作曲

 日本放送協会の委嘱により作曲、謡曲「松虫」の最後の部分を詞とした。
 形式は古典三曲に準じて
 「序」「前唄」「まくら」「手事」「中唄風」「手事」「散らし」「後唄」「結び」
 としたが、作曲法として複音楽(ポリフォニー)を用い、各声部を独立させてある。
 昭和34年7月作曲





 119. 祭  花         吉崎克彦 作曲

 祭りと花を意識的に表現できるよう心掛けて作曲された曲です。
 前半部分は『花』をモチーフとして、春ののどかな香があたり一面にたちこめ、
 今を盛りと咲き誇る桜の花を現し、後半部分は『祭り』をモチーフとして、
 尺八・箏・17絃を、笛や太鼓にみたてて、祭りの持つ華やかな部分を現しています。
 曲全体を通して、大勢の方が合奏を楽しめるように作曲されています。 





119-1. ままの川   菊岡検校作曲

京流手事物です。作曲は菊岡検校、箏手付け松野検校です。作詞は
宮腰夢蝶という方で、歌詞の中に作詞者の名が読み込まれています。

夢の世界といわれた遊郭は、一歩足を踏み入れますと、一転して、社会階級も
なく、束縛もなくお気に入りの女性と、自由に恋愛を楽しめるといった別天地
でありました。しかし男性にとりましては、まさにその通りでもそこに住む女性に
とっては『エーイ ままよ』と嘆くこともしばしばだったようです。

ままにならない恋を、思い川、妹瀬の川、ままの川と並べ、その縁語をつづって
遊女の諦めの心を歌っていきます。歌い始めの「夢が浮世か…」は義太夫節の

『壺阪霊験記』より用いられています。





 120. マリーン・ラブ     水野利彦 作曲

 エキゾチックな潮の香りの満ちる異国の島々、
 神々への祈りの声が鼓動のように響いてくる。
 心ときめかす潮騒、風がささやき、波の音が心を打つ昼と夜との狭間で、
 南国の空気は、一際輝いて見える。





 120−1  万 才     城 志賀 作

  三絃二上がり・筝平調子の端唄物です。
 歌詞の内容は各種の万才歌をつなぎあわせたもので正月の風物をうたった
 めでたい曲です。筝の替手はオランダより伝わったオルゴールにヒントを
 得て作られたという、オルゴール調子、別名オランダ調子の特殊な調絃の、
 市浦検校作曲による『オランダ万才』です。
 三味線音楽で万才と言うと、城志賀のこの曲から影響をうけたものが多いです。

〔編成〕筝、三絃、尺八
〔演奏者の感想〕三絃の音が唄の旋律を弾くので唄の練習に良い曲である。





120-2.    万葉越中の春  野村正峰作曲

武門の誉れ高い大伴家の棟梁で、颯爽たる青年貴公子、そして
万葉集最後の歌人、大伴家持。溢れるような詩情のある歌は、
大部分が、もっとも円熟した越中での青春期の作と言われています。
曲の中の歌は当初、単身で赴任していた家持が都より任地に妻を
迎えた、初めての春の作とされているものです。

[編成] 筝・三絃・尺八
[演奏者の感想] のんびりした曲で演奏も合奏もしやすい。





 121. みずうみの詩        森岡 章 作曲

 日本にはたくさんの湖があります。阿寒湖・諏訪湖・琵琶湖など、
 美しさは様々ですが、その土地に住む人々と深く繋がっています。
 波間にたわむれる魚、水面を渡ってくる風。
 そんな湖の色んな姿を作曲者は、箏二部と尺八・ピアノで詩にしました。
 朝日が昇り霧が晴れていく様子などを思い浮かべながらお聴きください。





 122. 水 鳥     平岡吟舟 作曲

 この曲は高橋箒庵の作詞、平岡吟舟の作曲で昭和9年に東明流の三絃曲として作られました。
   水上は 誰みよし野の奥ならん  花の下露 小笹のしづく  
     東の紀の路に北山川よ  深山がらすや川千鳥  
   雲井にひびく糸竹の   しらべにかよふ水鳥の声はつきじ
   千代に八千代に……。
 と、うたいます。 





122-1.  みちのくの譚詩曲   野村峰山作曲

東北の村の生活から生まれた伝統工芸品や農耕作業具は、現代にも多く伝えられ
ています。
寒い地で工夫され、江戸時代から農家の野良着として着用されていた津軽の『こぎん刺し』。
山形県鶴岡市に残る、長さが4メートルを超える木製の大きな橇。
秋田県角館のいたや楓を指で薄く裂いて編み上げた『いたや細工』そして、
宮城から岩手南部に伝わる正義の守護神として厄を追い払う霊験あらたかな『カマ神様』
この地方独特の工芸品や信仰、暮らしの風習から幾つかの物語を想像して譚詩曲として
まとめています。





 123. 民謡メドレ−     佐藤義久 作曲

 この曲は弥三郎節・五木の子守唄・津軽じょんがら節・船頭唄・阿波踊りの
 五つの日本の民謡をメドレ−に編曲してあります津軽三味線や船頭の漕ぐ櫂の音、
 熱気に満ちた祭囃子など、日本の故郷"を巡る民謡の旅をお楽しみください。





123-1.    夢幻   大嶽和久 作曲

夢を抱き、その夢が幻のごとく消え去ると、また新たな夢を追う。
この様に、人々は明日への糧として夢を抱き、夢を追い続けます。
たとえ空しくとも、夢を追いロマンを追い求めることは我々にとって
欠くことのでもありましょう。
                    1991年10月 作曲
[編成] 筝・17絃・尺八
[演奏者の感想] 3パートが揃えば楽しい曲です。





123-1.    夢幻   大嶽和久 作曲

夢を抱き、その夢が幻のごとく消え去ると、また新たな夢を追う。
この様に、人々は明日への糧として夢を抱き、夢を追い続けます。
たとえ空しくとも、夢を追いロマンを追い求めることは我々にとって
欠くことのでもありましょう。
                    1991年10月 作曲
[編成] 筝・17絃・尺八
[演奏者の感想] 3パートが揃えば楽しい曲です。





 124-1. 無限流   水川寿也 作曲

 水の流れ、空気の流れ、時間の流れ、我々の日常は複雑な『流れ』の中に
 あります。それが余りに日常的であり普段は気づくこともありませんが、
 無限の彼方から始まり、無限の彼方に続く『流れ』というものに思いを
 はせる時、言葉に出来ない感動を憶えます。
 時間の流れを切り取りリズムを創り、音の波を切り取りメロディーを創る。
 『流れ』という言葉と『無限』という言葉にふと感動を憶え、作曲者は
 この曲を創りました。

 心地よいリズムの中で、川の流れに舞う木の葉のように、時に意表を突く
 展開を交えながらテーマは変化していきます。
 各パートは、ある時はバラバラに個を主張し、また、ある時は一丸となって
 ユニゾンフレーズを演奏します。曲の最後には最初のテーマが演奏され、
 無限の彼方に続く流れに繋がっていきます。

 〔編成〕:箏T・箏U・十七絃T・十七絃U・尺八





124-2.  虫の音    藤尾匂当作曲

 能の歌詞を引用した謡いものの名作で藤尾匂当の作曲です。
前歌前半では、亡き人への想いを歌い、
前歌後半では、ままならぬ恋人への想いを歌います。
歌には古風な情緒が漂います。
手事ではチンチロリンという旋律や消し撥の奏法になどによって
虫の音を擬音的に表現しています。
後歌の『面白や…』からは謡曲の歌詞をそのまま歌っています。
謡曲の松虫の筋は、阿倍野の酒店に来るお客が死んだ友の話をします。
阿倍野に松虫の音色を訪ねて歩くうちに友が死んでしまったこと。
しかしやがてその友は亡霊となって現れ、
供養によって安心立命して消えうせたという話しです。
この説話は阿倍野にある松虫塚にまつわる伝説によるものといわれています。
歌詞にあります。機織り虫はキリギリス、松虫は鈴虫のことです。





 125. 虫の武蔵野       宮城道雄 作曲

 歌詞は磯部艶子女史の作で、武蔵野に虫を尋ねて逍遙し、
 松虫・機織り・馬追と鳴き声を楽しむことを唄ったものである。
 東京音楽学校の生徒の、演奏会用として作られたものである。
 三曲合奏形態で前唄・手事・後唄の三段形式のなっている。
 その手事には三絃のハジキ、箏のすくい爪などで虫の鳴く音を表し、
 尺八のカラカラのところは、えんまこおろぎの感じを出している。





 126. 紫の幻想       野村正峰 作曲
    
 万葉集第一巻にみられるこの二首は、はじめ大海人皇子の妃であり、
 後に天智天皇の妃となられた額田王と大海人皇子との間にかわされた一種の相聞歌である。
 雄大な万葉の標野(しめの)天皇の狩猟用のご料地に、
 天皇のご一行が駒を進めていく情景や、紫草の咲き乱れる草原にかわされる、
 お二方の暖かい心の交流がこの曲の基調となっている。





 126−1.    明  鏡  尺八、三絃二重奏曲    杵屋正邦 作曲

 尺八が胡弓に代わって三曲構成の一翼を担うようになってから既に久しく、
 今までは一般に、尺八の合奏は筝曲系の楽器や奏者とによるものが最も自然で、
 且つ、融合しやすいと考えられているようです。
 正にその通りであろうかとも思われますが、翻って、尺八本曲、就中、琴古流系の
 演奏に思いを致すとき、その間合いや呼吸法には、長唄を含む三味線音楽のそれと
 きわめて相似するものがあり、そこに新しい組み合わせの可能性を感取することが出来ます。
  「明鏡」は、作曲者のそのような受け止め方の適否を具体的に知る拠り処の一つ
 として書かれた作品です。
 まず、遅い部分のやりとりに始まり、次に軽快な動きから、やや長めのフレーズの
 交互演奏、転じて急速調となり、最後に冒頭と異なる遅い曲調をもって終わります。





 127. 明治松竹梅    菊塚検校 作曲

 初代菊塚与一検校の作曲で、高低もの筝曲として明治の大阪新曲の代表的なものである。
 調子は阿蘭陀万才の「オルゴール」調子に依ったもので、古くは三ツ橋匂当の
 「松竹梅」・幕末の菊沢検校の「新松竹梅」明治に至ってこの「明治松竹梅」と
 いずれも大阪に生まれた名作品として有名な曲である。
 歌詞は、明治三十三年「松上鶴」三十四年「雪中竹」三十五年「新年梅」と
 以上三つの勅題にちなんだ
 明治大帝・大正天皇・昭憲皇太后・貞明皇太后の御製・御歌を集めて
 謹作した曲で明治皇室の名を取り「明治松竹梅」と名づけられ
 明治三十五年の春に作曲されたものである。





 128. 名所土産

 この曲は上方唄、三味線もので作曲は「時習考」によると讃岐の何某というが、
 或いは玉塚検校の作ともいわれる。後に筝に手がつけられたもので、
 東京へは明治末に徳永検校が伝え、山田流では京風物として盛んに奏され、
 奥の手となっている。
 大阪では最高の奥の三役の曲として特別の教授曲として取扱われた時がある。
 調子は平調子であるが、山田流では雲井調子にしている。
 唄は大和辺の名所を叙したもので名所尽くし唄の一つとも見られる。


 現代曲は各々の作曲者の解説から引用させて頂きました。
 また、古曲は「山田・生田流 筝唄全解 今井道郎著 武蔵野書院刊」を
 参考にさせて頂きました。





128-1. 瞑 想   平塚芳朗作曲

静かにふけゆく夜のひととき…一人机の上に頬杖をつき、じっと目を閉じていると
頭の中に静かな音楽が沸き出ずるように流れてくる。そんな音楽を曲にまとめたのがこの曲です。

幻想は幻想を呼び、まず華麗な四分の三拍子のリズムで舞踏会が美しく描き出されます。
そしてそれはやがて夢の如く消え去り、いつしか悪夢と化し、次の新しい主題が現われます。
それは四分の二拍子のリズムの素朴な歌です。後半部はそれらに繋がる強烈な長い接続部に
オーバーラップしてこの曲のクライマックスを造形し、やがて静寂の中にとけこむように曲は終わります。



 現代曲は各々の作曲者の解説から引用させて頂きました。
 また、古曲は「山田・生田流 筝唄全解 今井道郎著 武蔵野書院刊」を
 参考にさせて頂きました。