21. 加賀の月        中村双葉 作曲
 
 俳人、加賀の千代の作品を年代順に読み込んで作った詞に作曲したもので、
 最初の三拍子の部分は若い頃の情熱的な千代女を表現し、
 尺八二重奏のあとよりは『百なりや 蔓ひとすじの心より』と
 悟りの境地に入ろうとした心持ちを表している。
 手事の部分には、替手に八段を使い、後唄にうつり、
 千代女の70年間の生涯を綴ったものである





 22. 篝  火    野村正峰 作曲

 人類は「火」の発明によって文明への第一歩をしるしました。
 原始時代の荒野にともされた篝火は人類の明日への限りない希望の灯火だったことでしょう。
 "EXPO70"にちなみ、人類文明の進歩を祈って書き上げられた作品、
 燃え上がる炎と人々の歓喜の踊りが躍動的にえがかれています。
 テンポの速い軽快な曲です。何となくナポリを思わすような旋律が出てきます。
 編成は箏T・箏U・17絃・尺八です。





 22-01.  神楽・鳥追		

 神楽は京の津山検校、鳥追いは松浦検校の作曲です。
 神楽は手事物としては古い曲で、親しみやすい曲です。箏の手も伝わっていますが、
 後に鳥追いが作られてからは鳥追いとの合奏ばかりとなりました。
 神楽は能の『室君』鳥追いは能の『鳥追い舟』から歌詞を適当に取り出して繋げたり
 補ったりして作られています。このように違う二曲で演奏するものを打ちあわせものといいます。 

 本日は歌は神楽を手事は神楽と鳥追いの合奏で演奏いたします。





 22-1. 花 月   大嶽和久作曲

 むかし人は、文学や音楽などあらゆることに『わび・さび』を求め、
 また一方では、遊びや日常の事柄に『風流』をもとめ、『粋』でありたいと願いました。
 現代人には殆どなくなったと思われるこの感性。
 これらが求められた時代はおよそ現代とはかけ離れた世界だったのでしょうか。
 しかし『わび・さび・風流・粋』などといった私たち日本人の原点とも言える感性は、
 時代が変わっても、いつまでも大切なものと思います。





 23. かごめの主題による筝四重奏曲    吉崎克彦 作曲

 この作品は「祭歌」「祭歌二番」の姉妹曲として作曲したものであるが、
 前作よりも各パートをより音楽的、器楽的に鮮明度を高めてみたものである。
 曲は日本の代表的わらべ唄「かごめかごめ」をテーマとした変奏曲風な作品となっている。






 24. 楫 枕     吉村検校 作曲

 遊女の夜々枕をかえる果敢さを漂う舟に喩え、その辛い心情をうたった唄である。
 作曲は吉村検校によるもので、奥許に入るべき難曲である。





4-1. 颯(かぜ)   池田静山作曲

風…花の香りを誘う春の風、夕べ吹き来る夏の風、
わくらば舞い散る秋の風、吹きすさぶ風…それは木枯らし…。
四季の様々な風は人の世を吹きぬけて行きます。
そんな気持ちを尺八と17絃の二重奏曲に託しました。
一楽章の曲ですが、三つの部分によって構成されています。
プログラムに書かれている颯(かぜ)という字は本来、
『かぜ』という訓よみはありませんが、
作曲者は『雰囲気的にご理解願って、
あえて『かぜ』と読んでいただきたい』と曲名に付けられました。





 25. 風聞草           石垣征山 作曲

 風聞草とは萩の異称で、
 言葉の響きからくるイメージと実際の草花のイメージをだぶらせて、
 それを二本の尺八と三絃、17絃に託した。
 リズム、音階とも自由な前半部分と双調陰旋法に
 基づくリズミカルな後半部とにより
 構成されている。





 26. 風 邪 薬    池上眞吾 作曲

 風邪は最も身近な病気であり、様々な風邪薬が市販されているほか、
 民間治療も広く行われています。この詞はそれらを詠み込むことを趣向としたものです。
 更に百人一 首の和歌をもじった句を挿入する事で全体の引き締めを図りました。
 夏の章を前唄に、冬の章を後唄に配した手事もの形式の三曲合奏です。
 基本的には従来の地唄手事もののスタイルを踏襲していますが、
 語り口調で表現する部分を取り入れたり、楽器によってくしゃみなどの擬音を奏したりと、
 楽しいアイデアも盛り込んでみました。

 夏の章 
  
 三味線・人目・手ぐすねに幕  ひくものあまたある中で  ひいて後悔するものは
 貧乏くじと風邪なりけり    夏の暑さに油せば  ウイルスとやらにしてやられ   
 いつの間にやら背筋に悪寒    海よ山よのその時期ニン   布団の中でア寝とんは   
 げに情けなきかっこントウ   風邪をいたみ脈打つ頭の己の身なれば  風呂にも入れず
 肩こるゲンかいゲン  うつすとなほると言う人あれど   本当になおったためしなし
 その場ポン限りの気休めか                                            

 冬の章
 
 冬に用心怠らば 寒波ブロンに身も冷えて  たちまち鼻水いっぱいロン 
 くしゃみ鼻水鼻づまり むべ鼻風邪をつらしと言うらむ  
 そのうちに咳こんこんこんこんタック  とうとう胸につかえスタック 
 目には涙があぷれコール  扁桃腺はあかコナール  熱もあるペンとぞ思はるる  
 もう二度とインフルエンザは勘弁ザ  風邪は万病のもととかや 
 まづなによりもたっぷり栄養 卵酒  暖かくして 寝るがよい





26-01. 尺八と箏による二重奏
       風によせる三つの前奏曲  長沢勝俊作曲

尺八と箏による二重奏曲です。
「風光る」「風冴える」「風薫る」という三つの章からできており、風に
ちなんだ心象風景とでもいえる作品となっています。

光る・冴える・薫るといった言葉は自然に対する日本人の細やかな気持ちと、豊かな感受性を
表しているものと思われます。作曲者は日本人の感性を基本にすえて、素直に表現したいという
願いを込めて自分の気持ちを尺八や箏に託して作曲されました。





 26-1. 尺八合奏曲 風の色  石垣征山作曲

 あなたは風の色を見たことがありますか?とびっきりの自然の中では風の色さえ見えています。
 それはどんな色にでも変わります。海の青、空の青、草原、木々の緑、どれもが風の色になり得ます。
 牧場での風の色を…風を表現するには最適の楽器“尺八”の三部合奏曲として表しています





 27. 風の歌     沢井忠夫 作曲

 風と、それに吹かれる人の心との対話的な作品で、
 演奏には箏・尺八共に音楽性が要求されます。
 特に後半に表れる尺八・箏それぞれのカデンツァは、
 演奏者の自由な解釈によるファンタジックな詩として、
 生まれ出てくることが望まれて作られた曲です。





 28. 花・鳥・風・月    吉崎克彦 作曲

 花はタンポポ・鳥はすずめ・風は東風(とんぷう)・月は十六夜(いざよい)。
 古くから日本人に愛されてきた代表的モチーフ、『花鳥風月』をテーマに
 祭花シリーズの第四番目の曲として作曲。
 リズムや和音に少し変化を加え、アンサンブルとして、
 新鮮な展開をもたせられるよう工夫を凝らしてみた。
 このシリーズは、より多くの演奏者の方々に、親しみやすい曲になるようにと
 考えをめぐらせつつ、楽しいアンサンブルとの出会いに、
 ささやかながらでも寄与できればとの願いを込めた作品です。





28-1.  河童渡来の碑   中山義徳作曲

河童にまつわる伝説は日本中のどこにでもありますが、
中でも熊本県の八代が日本最初の渡来地とあり、
その碑が市内を流れる川の土堤に建立されています。
いたずら河童たちが懲らしめられて、
後には子供たちの水難除けの神さまとして祀られる…
その由来を作曲者は小さい時から何回となく母から聞かされてきました。
歌詞は作曲者の母が詩としてつづったものです。
科学文明が極度に発達した今日、
曲を通じてのびのびと子供達のバイタリティーを引き出すことが出来ればと作曲されました。





 29.	合奏曲ト短調





29-1.  奏(かなで)  江戸信吾作曲

演奏する喜び、楽しさ・調和する美しさを二丁の三絃と尺八の
三重奏にまとめました。と、作曲者の解説は短いものですので
そこで、演奏する方々に合奏の様子をお聞きしたところ、
一番に注意したのは、お互いに旋律を歌いながらも、出すぎず、
引っ込みすぎずということだったそうです。
喜びと楽しさに酔いしれると他のパートを消してしまうので、相手の
喜びに付き合うように演奏したり、我が物顔で演奏したりと奏でることを
楽しみました。






 30. 華 紋      吉崎克彦 作曲

 この曲は『祭花』『祭花二番』という曲の第三楽章的に位置づけてみました。
 主題と 言えるフレ−ズを全般に配しながら淡々と曲は流れ、色々なうねりをくり返し、
 大きな 終結に向かう。
 『華紋』とは、音のうねりが小さく、または大きく現れ、淋しさよりは華やいだものへ
 の思いからつけたものである。





 31. 唐 砧     宮城道雄 作曲

 この曲は作者がかって朝鮮に住居せられし当時、月夜に朝鮮の女性が砧うつ時の
 気分を受け入れて作曲されたるものにて大正二年秋の作である。
 形式は筝二部と三絃との三部合奏曲、或は三絃二部に分かれ四部合奏にして
 従来の合奏曲の合い口よりも協和音と拍子に苦心されたる作曲なり。





 32. 硝子の星座     吉崎克彦 作曲

 今年見た流星群は、強い印象として、目に焼きついている。流れる星々は、
 語らいのひとこまのような自由な空間を作っていた。残像は無条件に感動的だった。
 【虚空の星座】のシーン
 ゆるやかにきらめく静寂の空間を、前半は、
 17絃によるモノトーン的な音の流れを中心に、後半は、尺八を核とした虚空の光として
 具体化してみた。
 【きまぐれな星座】のシーン
 宙を彷徨う星々は、時空を越え、その姿を現しては消えていく。
 流れる星たちの語らいは、静から動へ変化する。
 【迷いの星】のシーン
 五人の奏者が、各々ソリストとして存在するこの章は、ソロとして独自性と、
 二重奏としての色合いを持ち、夢想的、幻の世界を創り出す。
 【ふぞろいの星座】のシーン
 五つのパートは、次第に音の束になり、流星の群舞のごとく、鮮やかに光彩を放しながら、
 集結へと向かう。





 33. 雁 音     佐藤義久 作曲

 秋もしだいに深まり、山並みは思い思いに彩られてきました。
 すすきの穂なには遠い風に少しばかりそよいでいます。
 たそがれ時、真っ赤な夕陽を浴びて天も地もみな萌えあがっています。
 ふと宙を見上げると、たくさんの雁が鍵になり棹になり渡っていきます。
 かりがねや 右に左に 秋の空





 34. 迦樓羅     池上信吾 作曲
  
 仏教の守護者『迦樓羅』は口から火を吹き、竜を捕って食うといわれ、
 『天狗』は この『迦樓羅』の変形を伝えたものであるといわれています。
 第一章では、大空を行く『迦樓羅』をイメ−ジし、二章では、田園風景の中を身軽に
 飛び回る『天狗』の姿を……、昔話では悪役に回りながらも何か哀愁を感じさせる。
 そんなキャラクタ−を描いてみました。





 35. 河内音頭に寄せて     菊重精峰 作曲

 夏になると、何処からともなく耳にする太鼓の音と、渋い声。
 大阪東部に位置する八尾市は、その河内音頭のメッカであります。
 この曲は、河内音頭をアレンジしたのではなく、河内音頭をモチーフにして、
 さわやかに且つ、力強いイメージで作曲されたものです。
 歌も、太鼓も取り入れず、純器楽曲として楽しめるようになっています。





35-00.   管 弦 章 節   山本 邦山  作曲

 この作品は、複数の弦楽器と管楽器により構成されており、楽章としての段落を
持たず、全体の流れにおいて句読点を有しているところから、管弦章節と名づけています。
規則的な形式にとらわれず、豊かな多様性を持つ各々の楽器が常に縦と横との軸を意識し、
共鳴させながら、必然的な音の区切りによる音楽要素の発展性を目指している。

 日本の風土の中で育(はぐく)まれて来た尺八と箏・三絃、琵琶との融合により可能性を深
める新しい音の響きは、演奏上の演出によって無限の広がりを持たせる事も出来るものと思う。
全曲を通じ、各々(おのおの)の楽器の技量が均等で有る事を作曲上、心掛けているところから、
流れの中の主旋律を見失わない様な曲づくりを作曲者は演奏者に期待しています。

〔編成〕:T箏・U箏・十七絃・三絃A・三絃B・尺八T・尺八U





3. 管 絃 調 楽   森岡章作曲






35-01.  管の彩    石垣征山作曲

 この曲は尺八の演奏家が作曲された曲ですので、尺八の持ち味が良く
出ています。二本の尺八が音で描く響きの世界へ、17絃が柔らかい音で
寄り添うように合流するかと思えば、鋭いタッチで切り込んだりしながら、
より大きな絵画的な音の世界を拡げていきます。

〔編成〕:17絃・尺八T・尺八U
〔演奏者の感想〕:17絃をベースに尺八の世界が広がって稽古していても楽しい曲でした。





 35−2.    菊 日 和     石垣征山 作曲

 空は晴れわたり、空気も澄みきった秋晴れの良い一日、ほろ苦いような香りを
 持つ大輪の菊の花に心も和むひとときを楽しむ。そんな縁側の温もりと
 のどかさを三弦合奏と尺八により表現してみました。





 36. 祈 詩 REN-MEN          吉崎克彦 作曲

 石川県の医王山寺。そのの医王山寺の『祈りの詩』が綴られた一枚の
 和紙を見せていただき、その詩のイメージから「祈 詩 REN-MEN」と名付けました。
 以前に「哀歌」という17絃と尺八の二重奏を作曲したが、今回もこの編成で書き始めた。
 モチーフがどんどん覚醒いく割には曲の性格は、どんどん「穏やか」になり、
 詩のインパクトが、熱い曲の好きな私に、歯止めをかけてしまい、
 今までとは違う色合いを見せてくれたようである。
 前半はまさしく「祈 詩」であり、後半は、私に戻っている気がして、
 個人的に好きな曲に完成した。





 37. 北風のとき    宮田耕八郎 作曲

 1982年と1983年にまたがる冬は、暖冬ながら世相はことのほか寒々として、
 このまま底なしの冬に落ち込みそうな恐ろしささえ感じる冬でした。
 こんな冬の日々を想いを、東京に、この冬最後の雪が降った日のあと書き上げました。
 尺八は北風を吹き鳴らし、十七絃は地の底に秘めたれた温もりをうたいます。





37-01. 北の便り 〜民謡をあなたに〜  野村峰山作曲

ニシンの北海道、花の山形、津軽富士、米の国の秋田。
北海道と東北地方の民謡を北の国からの便りとして集め、
尺八二重奏で楽しく合奏できるようまとめられた曲です。
前奏は、追分の送り囃子、続いてソーラン節、花笠踊り。
中間部の独奏には追分の合いの手部分が使われています。
後半はホーハイ節ドンパン節と続き、最後は北海盆歌で盛り上がって終わります。





37-1.   吉祥文様    菊重精峰 作曲

吉祥文様とは「松竹梅」「瑞雲」「鶴亀」「蝶」「鳳凰」などを描いた図柄を言い、多くは
晴れ着や慶事の宴会などの調度品などにあしらわれております。吉祥とは「良い兆し」「め
でたいしるし」という意味です。

今回委嘱を頂いた先生のお名前をヒントに色々考えた結果「吉祥文様」としました。

〔編成〕:箏・三絃・尺八
〔演奏者の感想〕:





 38. 吉 備 路     三上澄恵 作曲

 数多くの遺跡があり歴史の郷として知られる吉備路。
 現代と言う時代にとっぷりひたりきって生きている者にとって吉備路への散策は、
 思いがけぬ発見に満ちたものになるかも知れません。
 この曲はそんな吉備路の 時の流れをあえて 無視したような佇まいのもつ
 のどけさときびしさを 筝・十七絃・尺八の音色にたくして表現したものです。





38-01. 尺八・箏・三絃・17絃のための四重奏曲第四番 絹の道 唯是震一作曲

 曲名の「絹の道」は特に深い意味は持っていませんが、
 第一楽章の主題をオリエント的な旋律に設定したことから名付けられました。
 一楽章は、異なった拍子が組み合わさって交差するポリリズムが随所に表れます。
 二楽章は、八小節からなる四分の四拍子の主題と、
 十の変奏、コーダーからできております。
 三種の絃楽器にはそれぞれの伝統的な演奏法が駆使されており、
 いろいろな性格の変奏が試みられています。





 39. キャニオン ビュー   ジョン・海山・ネプチューン作曲

 この曲は渡辺泰子さんとその筝アンサンブルの委嘱を受けて作曲したものです。
 よく演奏される伝統的邦楽が五音音階によるものなので、
 その方が即興が容易であろうとの考えから、五音音階を使って欲しいとのことでした。
 三楽章のそれぞれは、半音違いの音をたった一つずつ含んだ、
 異なる五音音階により作曲されています。
 アメリカ合衆国、アリゾナ州のグランド・キャニオンを訪れた時、
 私はまだこの曲のタイトルを探していました。 
 グランド・キャニオンからの眺めは、視線を少しずらすだけで、その度に、
 違って見え、ちょうど、この曲のようだと思いました。
 この曲も、ずっと五音音階でありながら、曲が進むにつれ、
 まったく異なる「音の風景」を醸し出しますから。





 40. 狂詩的ミュ−ズ      吉崎克彦 作曲

 尺八・箏・ 17絃の三重奏曲を書く機会に恵まれた。
 ここ数年間はどうしても書いてみたい編成がこの三重奏です。
 この曲は、全体を通じてテンポが目まぐるしく変わります。
 奏者の音楽的創作を重視して、高い技量を要求する曲風にしてみました。
 『inテンポ 』の流れを『苦手』とする私には魅力的作風でもあります。
 一人一人が『ソリスト』であり、『3人』のパ−トが揃って初めて、
 曲の構想が見えてきます。
 原曲初演では『緑のなかで』という題名であったものが、
 その曲調より『狂詩的ミュ−ズ』と名も変わり、今後私の中で、
 演奏スタイルも変わって行きそうです。





 41. 京 人 形        森岡 章 作曲
          
 艶やかな京人形の一生を、舞台にお目見えする舞妓のように芝居風に描写したもので、
 いかにも人形が可愛いくてたまらないと言う、作曲者の 心情が良く表現されている。
 和楽器だけでなくピアノ・ビブラフォンと 洋楽器を入れての演奏もできる曲ですが、
 本日はウッドストック・タンブリン・トライアングル・拍子木を打ち物として演奏いたします





41-1 京響    菊重精峰作曲

作曲者は、京らしさを残しながら、現代風に作ることを前提に考え、全体を通し、
メロディラインは日本音階を主に使いました。
リズムやハーモニーで現代風に仕上げながらも、古典手法独特の掛け爪、掻き爪、
ウラ連をほんの少し隠し味としていれることにより、『おことの合奏曲』を匂わ
せています。曲の中間部分の筝パートで作る不協和音とそれに乗っかる尺八のメ
ロディは、人間の心の叫びや訴えを表現しています。曲の途中には、『コンコン
チキチキ コンチキチキ』といかにも京らしいリズムが、お耳に届くと思います。

〔編成〕筝T・筝U・17絃・尺八
〔演奏者の感想〕お囃子の表現が楽しい曲です。





 42.	桐





 43. 銀色の翼にのって        佐藤義久 作曲                演奏時間 10分弱

 テンポの速い軽快な曲です。何となくナポリを思わすような旋律が出てきます。
 編成は箏T・箏U・17絃・尺八です。





43-1.  銀河の幻想   筑紫歌都子作曲

ひととせの  一夜の逢瀬  あこがれの  ゆめの星よ 
と、天の川を挟んで点在する彦星と織姫は一年に一度だけ銀河を渡って会うことができます。
宇宙旅行が進んでいる現在ですが、
空に輝く星たちはやはり見る人々に夢と希望を与えてくれます。
流星群が見せる流れ星の数にはため息がでるばかりです。
季節・季節に夜空の主役は変わりますが、
古来より人々は星に数々の想いを託してきたことと思います。





 44. 銀 世 界     菊原大検校 作曲
       
 銀世界とは、白銀の如き雪が降り積もりたる景色を云う、この歌は茶席のことを
 叙して窓から眺めつきぬ雪景色を歌えるもの。
 摘草・雲の峰・最中の月に配した、四つものの一曲である。





 44‐1.  草笛の頃   宮田耕八朗 作曲

 農村で過ごした幼い時の思い出を、三つの章につづりました。
 ゆったりした第2章からテンポの速い第3章へは、
 切れ目なく続けて演奏します。
第1章 川
 笹舟を流し、水遊びをした清流も、雨の後には恐ろしいほどの
 急流になったりします。
 人々は川のほとりに集落をつくり、川は常に生活と触れ合ってきました。
第2章	草 笛
 草の葉や木の葉を唇にあてて鳴らす、もっとも素朴な笛です。
 子供が初めて作ったこの楽器から、夢ははてしなく広がります。
第3章	流れ雲
 風の姿を想像で見るように、黒くて早く流れる雲は、自分で物語を作る
 劇画です。





44-2.    熊野讃景   大嶽和久 作曲

いにしえより信仰を集めた熊野三山への参詣道として
多くの人々が歩いた熊野古道には、風情ある
石畳や道標など歴史の香りが漂う。
2004年に世界遺産として登録された日本の原景である
熊野を代表する四景を旅します。
まず第一の景色は、祈りの道・石畳の熊野古道。
第二の景色は、怒涛の絶壁・楯ヶ崎。第三の景色は、
日本の原風景・丸山千枚田
そして最後、第四の景色は、神々の故郷・熊野三山です。

〔編成〕:箏T・箏U・17絃・三絃・尺八
〔演奏者の感想〕:





45.   組曲 東海道五十三次   中村洋一作曲

作曲者の中村洋一氏は、
安藤広重の名作『東海道五十三次』に初めて出会った時、
江戸時代の版画を見たというだけでなく、その時代の旅の楽しさ、
その時代の風景・風俗の美しさに触れることが
出来たような感動を覚えたそうです。
1968年に作曲に着手してから2011年六月に
京師を書きあげて全55曲を完成されました。
作曲者にとっては43年間という
半世紀にわたるライフワークとなったわけです。
作曲に当たっての基本方針は基音を変えないということでした。
基音を一越ドレミの『レ』と決めて作曲されているので
55曲の組み合わせはテンポの緩急による組み合わせ、
四季の組み合わせ、曲調の組み合わせなど自由に選ぶことができます。
本日は江戸からそう遠くない保土ヶ谷・木々が色づき始めて
秋が訪れる岡部・しとしととひそやかな春の雨の土山・荒馬と
人々が引き綱を引いて走り、
荒々しい祭り行事が宿場を走り抜ける宮を演奏いたします。





45-1. 雲井獅子     作曲者不詳

江戸時代に尺八は法器と呼ばれ、普化宗の宗教儀礼や修行の楽器として吹奏されていました。
この曲は、九州・博多の一朝軒という虚無僧寺で吹かれていたものです。
修行の時間である午前中は吹奏することが許されず、午後の休息時間に吹奏されたことから
『ヒルカラ物』と言われています。
本来はソロの曲でしたが、いつの間にか二重奏、あるいは三重奏として吹奏されるように
なりました。
古い曲ですので作曲年代、作曲者は不詳ですが、虚無僧達が辛い修行の合間に息抜きとし
て楽しみ、吹き伝えられてきた曲です。






 46. クレッセント     吉崎克彦 作曲

 月そのもの自身が輝く光体を持ってはいけない。
 しかし二次的に放たれた光は、夢と現実の中で多くの物語を生み出した。
 青白い月の光は、静寂の中でこそひときは美しい。
 夢と現実とが一体をなし、もはや自分の存在ですら希薄になる。
 この曲はそんな想いの中で書き出された。 
 尺八のカデンツ風なプロローグで始まり、主題の変化とあいまって、
 二つの楽器が完全に光と影を織りなす。





 46−1. グランデーション   吉崎克彦 作曲

 原曲は一弦琴の為に作られた作品ですが、このメロディにアンサンブルの「歓び」を
 吹き込んでみたいと考え、筝・十七弦・尺八を加えた四重奏に構成した合奏曲です。
 『祭花シリーズ』の一曲として、多くの演奏家の皆様に楽しんでいただければ
 幸いです。





46-2.    グリーン・ウインド  吉崎克彦 作曲

一章 舞々:舞々とは空気の流れ、木の動き、息遣いといった動的感覚を意味している。
      対位的色合いが強いので、リズムの「切れ」に十分注意すること。

二章 静寂:一章の対になる章である。穏かな中に動きの激しい曲になっている。
      中間の17絃のソロはこの章の静寂を最も表わしている。

三章 一過:過ぎ去るもの。一つ一つの音はリアルタイムで過去のものとなり、
      次々と場面は転回し、動きは留まるところなく最後まで受けつながれ、
      私に残された記憶は「一過」

[編成] 筝T・17絃
[演奏者の感想]





 47. 月下美人   吉崎克彦 作曲

 『月下美人』とは人知れず咲き始め、その夜のうちに萎んでしまう
 花として知られています。その純白な花びらは、清雅で艶めかしい。
 芳香を放ちながら月下にゆっくりと咲き出すさまは、
 まさに『月下美人』の名に相応しい。 
 一夜かぎりの華やかさと儚さは、直ぐに滅哀してしまう筝の音色にも似ています。
 優しい旋律を弾くとき、筝はもっとも華やぐ。
 その筝の清楚な華やかさを『月下美人』にたとえて作曲された曲です。





47-0. 月 虹   江戸信吾作曲

月虹は夜間に月の光によってできる虹のことです。
満月が近い冬の雨の夜に、ごく稀に現れ、これを見た人は幸せになれるとの言い伝えがあります。
そんな神々しい奇跡の光を箏と尺八の二重奏にしました。
淡い輝きから、月虹が出現するイメージで曲は始まります。やがて優しく繊細な光が、徐々
に生命力を感じさせる七色の虹となり、夜空一面に光輝きます。





47-1. 源氏三綴  福島頼秀作曲

『源氏物語』は54帖からなる大作ですが、この曲は特定の帖や場面を描写しているわけではなく、
その象徴的なイメージを音の挿画として3つの楽章にまとめたものです。
第一楽章では尺八1・2のように、二つの楽器がたたみかけるかのようにメロディーを演奏します。
第二楽章では尺八と三絃のソロでスタートし、後半は妖しい響きの中でかすかにわらべ歌が聞こえてきます。
第三楽章はロンド形式で、鈴の音を伴う主題が繰り返される運命のようです。





47-2. 恋 物 語    福嶋頼秀作

みなさん“恋してますか?”恋をしている時のときめきや高揚感は他のことでは代えられない、特別な感情です。
この曲は男女が出会い、ときめいて結ばれるまでの、架空の『恋物語』を音楽でつづった作品です。 

第一章『わたしから』第二章『えんむすび』
第三章『はるおうか』日常の中で出会った素敵な人のイメージを三味線が奏で、尺八ははときめく心を奏でます。
しかし中盤ではときめきとは裏腹に抱いてしまう不安感を箏の合奏が、多摩川の渡しのさざ波に浮かぶ小舟に
見立てて響きます。
恋愛の成就を願いお寺にお参りに、そして成就した恋を喜ぶ『春の謳歌』です。楽しく会話する様に楽器同士が
掛け合いをしたり、桜並木の桜吹雪を描写するかのような部分もあり大いに盛り上がって曲は終わります。





47-3. 心〜いのち 果てしものたちへ〜   菊重精峰作曲

 道具…ものは人によって生かされ、また人は道具…ものに頼って生きていかねばなりません。
しかし人はそれがあることの有難さを忘れがちになることがあります。
人が道具…ものを使うと、そこに一つの命が生まれ、やがて果てていきます。
そんな良きパートナーに感謝と祈りを込めて筆供養の鎮魂歌として作曲された曲です。





47-1.    氷 の 雫 音(しずね)  水川 寿也  作曲
    
『雫音(しずくおと)』と書いて「しずね」と読みます。香川大学の邦楽サークル
「竹友会」の委嘱作品で、作曲者は曲だけ送って題名を学生たちに考えてもらい、
曲のイメージにぴったりの題名を頂いたので、そのまま曲名になりました。

 静かなピチカートで始まり、いろいろなテーマを繰り返しながら曲は盛り上が
ってゆきます。3拍子は優雅なリズムと思われがちですが、この曲の最後はピリ
ピリとした緊張感に支配された3拍子です。

〔編成〕:箏T・箏U・十七絃・尺八





 48. 五丈原    野村正峰 作曲

 土井晩翠に詩"星落秋風五丈原"は支那の史書三国志の主軸となった
 蜀の丞相孔明と漢室の末裔で蜀の皇帝となった玄徳との君臣の情誼、
 王道精神のため一生を捧げた誠心の物語を長編の詩としたものである。
 この詩に寄せる感動を作曲したもので蜀軍が宿敵魏軍と最後の決戦を挑むべく、
 五丈原に出兵したが、総指揮官の孔明が病に倒れ、
 陣営が悲色にみちている情景を主題にしている。
 曲想は軍歌調、フォーク調など、現代のリズムを大胆に取り入れ現代の若人に
 人生の意気と誠心のうたを理解しやすいものにしようとこころみた。





 49‐1. 木立の中で  江戸信吾 作曲

 木立の中にある、小さな澄んだ池に差し込む光が、水面に照らされて輝く
 様を、尺八と十七絃の二重奏で表現した。     2003年 作曲





 50. 谺 の 詩       水野利彦 作曲

 早朝の清冽な幽谷に、透明な響きがこだましている。
 それは、まるで樹木や岩山の精霊達の声のようにも聞こえる。
 朝露が立ちこめ、浄化した空気の中で差し込む光さえも歌っているようだ。





 51. ことうた 〜日本の歌〜   水野利彦 作曲

 日本の最も代表的な曲目である
 「お江戸日本橋」「さくら」「かぞえうた」「荒城の月」
 の4曲をメドレーで綴ってみました。
 T筝は比較的やさしく書かれており、初心者でも喜んでいただけると思います。
 又、尺八のパートもありますので、尺八との合奏も楽しんで頂けます。
 アレンジは、筝の香りを失わない範囲で現代的な感覚を取り入れたつもりです。





 57−1.    ことうた 〜抒情〜   水野利彦 作曲

 『ことうた』シリーズは作曲者にとって、この作品で六作目になります。
 この作品では、筝で奏でてみたい日本の抒情歌が四曲メドレーでつづられています。
 「月の砂漠」「宵待ち草」「小さい秋見つけた」「喜びも悲しみも幾年月」と、
 幾度となく耳にしたり口ずさんだりされた曲です。
 心に残る名歌を、懐かしさと共にお聴きください。





 57-2  ことうた 〜民謡〜   水野利彦 作曲

  日本に伝わる民謡の中でも、よく耳にする『こきりこ節』『木曽節』『北海盆歌』
 そして『黒田節』の四曲をふたつの筝と尺八の三重奏でメドレーで演奏いたします。

 〔編成〕1・2筝、尺八
 〔演奏者の感想〕1筝は普通だが、2筝は後半、手が細かくなっているので練習が必要。





 52. 箏四重奏曲"秋"     宮城慎三 作曲

 この曲は二つの楽章から成り立っていて、第一楽章は、17絃のソロで更ゆく秋の夜を、
 中間部では鳴く虫の声を描写。第二楽章は尺八のソロで澄み切った秋の空を表現し、
 のち正進行のカノンによって    稔りの秋の風景を描写している。





 52-1. 筝によるポップス集(ポップス メドレー) 野村倫子 編曲

 大きな古時計・『千と千尋の神隠し』より
 いつも何度でも・明日があるさ/上を向いて歩こう
 今回は筝と尺八で、皆さんが良くご存知の曲に挑戦してみました。
 『大きな古時計』は2002年、平井堅さんが、NHKの紅白で歌っていました。
 百年 いつも動いていた ご自慢の時計。
 うれしいことも 悲しいことも みな知っている時計。
 チク タク チク タク人の鼓動と同じように休まず動いていた時計。
 でも今は動かない時計.…。
 『いつも何度でも』は懐かしさを感じる曲です。
 伸びやかに伸びやかに、何かが広がっていくように感じます。
 『明日があるさ/上をむいて…』はふたつの曲をつないでいるので、
 曲から曲への移りに苦労しました。





 52-2. 古道成寺   岸野治郎三作曲

 元禄時代に三味線曲として作曲され、道成寺ものの曲としては最古の曲とされています。
 奥州から、熊野詣に来る青年僧の安珍と真砂の庄司の娘、清姫の伝説を曲にしたもので、
 僧に恋した娘が、逃げる男を蛇の姿となって、どこまでもどこまで追いかけるという
 哀れで切ない恋心を唄いあげます。





52-3. 湖北物語    池上慎吾作曲

  琵琶湖の北側の地域は湖北と呼ばれています。この辺りは湖水も美しく澄みわたり、
山に囲まれ豊かな自然に恵まれた所です。
北国街道沿いには歴史を感じさせる美しい街並があり、人々の心を和ませてくれます。
この曲はそんな湖北の風景の中から、T楽章 木之本 … 北国街道の宿場町として栄え、
ここで作り続けられてきた絹糸。三味線の糸はこの木之本で多く生産されています。
絹の道シルクロードに思いを馳せ、オリエンタルな雰囲気をとりいれた曲調です。
U楽章 余呉湖…静寂の中にあって神秘的なたたずまいを見せる湖。
天女が舞い降りて柳の木に掛けたという伝説にふさわしい景色の湖です。
羽衣天女が舞い降りて来る幻想的な場面を雅楽風な音楽にのせて表現しています。
V楽章 長 浜…秀吉が城を築いて出世の足掛かりを掴んだことで有名な長浜は湖北の
中心的な町です。長浜八幡宮の大祭『曳山祭り』は華麗な祭りで、曳山の上で演じられる
子供歌舞伎は圧巻です。祭りの中で演奏される『しゃぎり』と呼ばれる祭囃子を数曲選んで
三楽章では曲中に登場します。





 53. 吼かい (こんかい)  岸野治郎三 作曲 

 歌舞伎の葛の葉の筋を地唄にしたものである。申すまでもなく狐に関する物語であるから、
 この唄は稲荷信仰とからんだ取り扱いをされている。
 浄瑠璃の筋は和泉の国泉北郡信田の森に住む白狐が悪右衛門に殺されそうになった時、
 安部保名に助けられた。保名は助けるとき傷をうけて弱ったのを白狐が保名の妻葛の葉に
 化けて介抱するうち、晴明なる子を産む仲となった。正妻の葛の葉は両親に連れられ、
 保名の居所を知って訪ねてくる。
 狐の化身なる葛の葉は正妻の葛の葉にふらちな心得を詫び、我が子晴明の養育を依頼し、
 障子に『恋しくば 尋ね来て見よ 和泉なる 信田の森のうらみくずのは』の歌を書いて、
 親子の悲しい別れをして、信田の森の古巣へ狐本来の姿にもどって帰っていたという物語です。
 地唄の筋はこれと少々異なり、ある男が病気になった母の治療の祈祷を狐の化身なる法師に
 頼んだ。ところがこの法師が以前から母を恋慕し、母が病気になり、
 衰弱するようになったのは、この法師の仕業であったのがわかり、追い払われるようになった。
 心をひかれながらも狐となって古巣へ追われて行くという物語になっています。

 現代曲は各々の作曲者の解説から引用させて頂きました。
 また、古曲は「山田・生田流 筝唄全解 今井道郎著 武蔵野書院刊」を
 参考にさせて頂きました。